高カリウム血症の治療法の1つにレギュラーインスリン(ヒトインスリン)を投与するGI療法があります。
「血糖値を下げるインスリンでカリウムが下げるの?」と思いますよね。
僕も初めて聞いたときはなんのために使うの?と悩みました。高血糖の聞き間違いかな?とか思ったりしました。
調べてみるとGI療法はれっきとした治療法であり、作用機序から見ても納得できるものだったのでブログに残します。
高カリウム血症とは?
読んで字のごとく、血中のカリウム値が高くなる疾病のことです。
高カリウム血症とは、血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることであり、通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。
MSDマニュアルプロフェッショナル版 高カリウム血症
カリウムは体内の電解質のなかでも特に数値に気をつけなくてはならないものです。
高すぎても低すぎても心臓に影響を与えます。カリウムが高くなりすぎると不整脈になります。
軽度の場合は利尿薬などを使ってカリウムの排泄を促進すればいいのですが、中度以上だと一刻早く対処しないと命に関わってきます。
インスリンの作用機序
インスリンは通常、血中のグルコース濃度(血糖値)が高くなると膵臓のランゲルハウスβ細胞から分泌されます。この機能がうまく働かないひとや、インスリン抵抗性や分泌量が少ない人は糖尿病と診断され治療されるのですが、それはまた今度。
膵臓から分泌されたインスリンはどうやって血糖値を下げるのでしょうか。インスリンによる血糖低下の過程は以下のようになります。
①インスリンはまず骨格筋細胞にある受容体に結合します。
②受容体に結合すると連鎖的にリン酸化が進み、インスリンの細胞内情報伝達がGLUT4まで届きます。
③情報を受けたGLUT4が細胞膜上に移動します。
④血中のグルコースを細胞内に取り込みます。

GLUT4はカリウム共輸送体
このGLUT4はカリウム共輸送体だそうで、
上記の過程のなかの最後のグルコースが細胞内に取り込まれるときに血中のカリウムも細胞内に移動します。
この作用により高カリウム血症を治療します。
実際に投与するときはレギュラーインスリンを5~10単位静注します。
このときインスリンの作用により血糖値も下がります。低血糖症状になるとこちらも命に関わるので、GI療法を行うときは必ずブドウ糖の点滴を同時に行います。
高カリウムと血糖値、両方のモニタリングをしながら治療しなければなりません。
コメント