腎臓のことを考えた鎮痛薬選択

年を取ると身体のいろんなところが痛んできます。肩や腰や膝などなど。

痛みがあれば当然鎮痛薬が処方されるわけですが、高齢者に適した鎮痛薬はどれなのだろうか。

2016年に行った学会で、熊本大学薬学部 臨床薬理学分野(当時)の平田先生の講演で高齢者の鎮痛薬について話されていて、大変参考になりました。

当時のメモが見つかったので自分なりにまとめておこうと思います。

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高齢者は体の機能が低下している

年をとると筋力や骨だけでなく臓器の機能も低下します。

体内に入った薬物の多くは、肝臓で代謝されたあと、もしくはそのままの状態で腎臓を通って尿の中に排出されます。

そのため腎機能が低下していると薬の排出が滞ります。肝臓で代謝されて無害ならいいんですが、そうでない場合は血中濃度があがり副作用が起きてしまう可能性があります。

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NSAIDsは薬剤性腎症の原因薬剤のひとつ

腎臓が悪くなる原因のひとつに薬剤性腎症があります。

講演で示されたスライドによれば、薬剤性腎症を薬の種類別に分けるとNSAIDsは2番目に多いそうです。(1番は抗菌薬)

薬剤性腎障害 – ncgmedu ページ!

NSAIDsの作用はPG合成を阻害することによる消炎沈痛解熱作用です。

NSAIDsは遊離されたアラキドン酸からPGを合成する経路の律速酵素であるシクロオキシゲナーゼの働きを阻害することにより抗炎症・鎮痛作用を発揮する。また、発熱時には種々のサイトカインの産生が促進され、視床下部にある体温調節中枢におけるPGE2の合成を増加させ体温を上昇させるように視床下部に働きかける。NSAIDsは発熱時に産生されるPGE2の合成を阻害することで、解熱作用をもたらす。

ガイドライン|日本緩和医療学会 – Japanese Society for Palliative Medicine

PGはいろんなところで合成されており、NSAIDsはそれらのPGの合成も阻害してしまうため副作用が生じてしまいます。

一般的なのは消化管出血です。これはNSAIDsが胃粘膜を保護するPGI2やPGE2の合成を阻害するためにおこります。

では腎臓ではどうなのか。

腎臓を細かくみると腎小体の集まりになります。腎機能が低下(糸球体濾過量)が減少すると、腎小体に入り込む血管を拡げることで流入量を増やして腎機能を維持しようとします。

この血管を拡げるのにPGが必要になるのですが、NSAIDsを服用しているとPGの合成が阻害され血管が拡がりません。

腎小体に流れ込む血液の量が減ると、当然血液が運んできてくれる酸素や栄養素の量も減ります。

またNSAIDsはネフローゼ症候群の原因になることもあります。だらだらと飲み続けるのには注意が必要です。

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腎臓に配慮するなら鎮痛薬の第一選択はアセトアミノフェン

米国腎臓財団は、腎臓病患者への鎮痛薬はアセトアミノフェンを推奨しており、米国老年医学学会の鎮痛療法ガイドラインでもアセトアミノフェンを推奨しているそうです。

日本では、アセトアミノフェンとNSAIDsの添付文書に同じような記載がされています。

しかしアセトアミノフェンの作用機序はPGの合成阻害ではないので、NSAIDsの代表的な副作用である腎障害の悪化、消化性潰瘍、易出血性、アスピリン喘息は薬理学的に考えると起こらないのです。

なので、添付文書の記載内容を改めるべきだとおっしゃってました。

CKDガイドラインも、鎮痛薬は全て少量短期投与ではなくアセトアミノフェンを使用を推奨する記載にするべきだとも。

薬剤師ができる処方提案

じゃあ医師や患者さんにどう処方を提案するのかですが、

・アセトアミノフェンに変更する。(過量だと肝障害になるので注意)

・NSAIDsは頓服で処方(毎日飲まなくてもいいこと伝える)

・同じNSAIDsでも外用剤だと全身に移行する薬物量が少なくてすむのでそちらに変更

特に痛くなければ飲まなくてもいいってことを伝えるのは大事かなと思いました。

参考にしたもの

日本腎臓病薬物療法学会

薬剤性腎障害 – ncgmedu ページ!

ガイドライン|日本緩和医療学会 – Japanese Society for Palliative Medicine

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